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日本野外彫刻史試論 (大学美術教育学会)

日本野外彫刻史試論 -日本彫刻史の新しい可能性-
高岡第一高等学校 松尾 豊



I.はじめに(現状・定義・目的)

 室内彫刻に対して野外彫刻とも屋外彫刻とも呼ばれる(本稿では以下野外彫刻に統一)室外の彫刻は、室内の彫刻とはその歴史やあり方や意味が必然的に異なっている場合が多い。これらの彫刻群の多くは、今全国各地の広場や街角や公園等の公私の空間に設置され活況を呈している。これまでの日本彫刻史ではあまり光を当てられなかった彫刻達が、開放された野外空間に飛び出し、市民からようやく認知され始め、陽光の下で、あるいは風雪に耐え、深呼吸しているかのような感さえ覚える今日的現状である。

 そもそも野外彫刻というものを直接的な衣食住以外の目的で、人間が木や石や土やその他多様な素材を彫り削り肉付けしたり時には構成して、野外又は屋外に配置した精神性の高い造形物と定義するならば、人類史上は、室内彫刻よりも野外彫刻の存在が先行すると思える。それは、石棒やストーンサークル等という造形物に具現化される。祈りや信仰を対象とするという意味では、民俗学的野外彫刻の出現である(注1)。歴史的に先行する民俗学的野外彫刻の流れを尻目にし、有史以後から今日まで、とかく室内彫刻が日本彫刻史の表舞台を賑わしてきたが、現在再び、野外彫刻が注目を集め、室内彫刻にも勝るとも劣らぬ人気を博しているのは、各地の野外彫刻展や彫刻シンポジュウムの盛況を考えれば、必然的なものがあろう。

 空間造形コンサルタントの飯野毅一氏は、今日の公共彫刻(主に野外彫刻)には芸術性と空間性と市民性などのいくつかの要素が求められているという(注2)。本稿は、これらの視点に着目しながら、以下の点について考察を試みるものである。第一に、日本の野外彫刻を設置者意図別分類により、各々の実例に基づきその歴史を概観し、各々の特性や今日の到達点を明確にすること。第二に、日本彫刻史を野外彫刻の視点を加え、総合的に見直したときに生じる日本彫刻史の欠落的視点や日本彫刻史の新しい可能性を探ることを目的とする。

II.設置者意図別野外彫刻史へつづく



I.はじめに(現状・定義・目的)
II.設置者意図別野外彫刻史
III.日本彫刻史の欠落的視点
IV.おわりに(日本彫刻史の新しい可能性)
<注及び引用文献><その他の参考文献・資料>

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